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さんしろう

三四郎

夏目 漱石

三四郎在火车上遇见一位肤色黝黑的女子,不由自主想起故乡的恋人。他假装睡着偷听她和邻座老人聊天,越听越放不下。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 169,765 字 · 343 页

青空文庫

女はとくの昔にどこかへ行ってしまった。大きな時計ばかりが目についた。三四郎はまたそっと自分の席に帰った。乗合いはだいぶいる。けれども三四郎の挙動に注意するような者は一人もない。ただ筋向こうにすわった男が、自分の席に帰る三四郎をちょっと見た。

三四郎はこの男に見られた時、なんとなくきまりが悪かった。本でも読んで気をまぎらかそうと思って、鞄をあけてみると、昨夜の西洋手拭が、上のところにぎっしり詰まっている。そいつをそばへかき寄せて、底のほうから、手にさわったやつをなんでもかまわず引き出すと、読んでもわからないベーコンの論文集が出た。ベーコンには気の毒なくらい薄っぺらな粗末な仮綴である。元来汽車の中で読む了見もないものを、大きな行李に入れそくなったから、片づけるついでに提鞄の底へ、ほかの二、三冊といっしょにほうり込んでおいたのが、運悪く当選したのである。三四郎はベーコンの二十三ページを開いた。他の本でも読めそうにはない。ましてベーコンなどはむろん読む気にならない。けれども三四郎はうやうやしく二十三ページを開いて、万遍なくページ全体を見回していた。三四郎は二十三ページの前で一応昨夜のおさらいをする気である。