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さんしろう

三四郎

夏目 漱石

三四郎在火车上遇见一位肤色黝黑的女子,不由自主想起故乡的恋人。他假装睡着偷听她和邻座老人聊天,越听越放不下。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 169,765 字 · 343 页

青空文庫

「それから?」

「それから、あなたの肖像をかくとか言っていました。本当ですか」

「ええ、高等モデルなの」と言った。男はこれより以上に気の利いたことが言えない性質である。それで黙ってしまった。女はなんとか言ってもらいたかったらしい。

三四郎はまた隠袋へ手を入れた。銀行の通帳と印形を出して、女に渡した。金は帳面の間にはさんでおいたはずである。しかるに女が、

「お金は」と言った。見ると、間にはない。三四郎はまたポッケットを探った。中から手ずれのした札をつかみ出した。女は手を出さない。

「預かっておいてちょうだい」と言った。三四郎はいささか迷惑のような気がした。しかしこんな時に争うことを好まぬ男である。そのうえ往来だからなおさら遠慮をした。せっかく握った札をまたもとの所へ収めて、妙な女だと思った。

学生が多く通る。すれ違う時にきっと二人を見る。なかには遠くから目をつけて来る者もある。三四郎は池の端へ出るまでの道をすこぶる長く感じた。それでも電車に乗る気にはならない。二人とものそのそ歩いている。会場へ着いたのはほとんど三時近くである。妙な看板が出ている。丹青会という字も、字の周囲についている図案も、三四郎の目にはことごとく新しい。