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さんしろう

三四郎

夏目 漱石

三四郎在火车上遇见一位肤色黝黑的女子,不由自主想起故乡的恋人。他假装睡着偷听她和邻座老人聊天,越听越放不下。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 169,765 字 · 343 页

青空文庫

事実としては、ただ大きく黒く見えたばかりである。

「バイオリンを買いましたか」

「どうして御存じ」

三四郎は返答に窮した。女は頓着なく、すぐ、こう言った。

「いくら兄さんにそう言っても、ただ買ってやる、買ってやると言うばかりで、ちっとも買ってくれなかったんですの」

三四郎は腹の中で、野々宮よりも広田よりも、むしろ与次郎を非難した。

二人は追分の通りを細い路地に折れた。折れると中に家がたくさんある。暗い道を戸ごとの軒燈が照らしている。その軒燈の一つの前にとまった。野々宮はこの奥にいる。

三四郎の下宿とはほとんど一丁ほどの距離である。野々宮がここへ移ってから、三四郎は二、三度訪問したことがある。野々宮の部屋は広い廊下を突き当って、二段ばかりまっすぐに上がると、左手に離れた二間である。南向きによその広い庭をほとんど椽の下に控えて、昼も夜も至極静かである。この離れ座敷に立てこもった野々宮さんを見た時、なるほど家を畳んで下宿をするのも悪い思いつきではなかったと、はじめて来た時から、感心したくらい、居心地のいい所である。その時野々宮さんは廊下へ下りて、下から自分の部屋の軒を見上げて、ちょっと見たまえ、藁葺だと言った。