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さんあくにんものがたり

三悪人物語

山本 周五郎

忍術千一夜 第二話

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,990 字 · 58 页

青空文庫

「三千や五千くらいはすぐに出せます」

成助はにこりと笑う、

「もし足りなければ集めることにいたしますが」

「少なくとも二十箱は必要だ、あと二十四五日あるから、食糧物資の統制をぐっと締めれば、法定備蓄量はそれでうくだろう、十日すれば肥後と庄内から米がつく、それとこれまでの蔵匿物をまとめてはたくんだ」

「田丸屋と折屋、この二人が難物ですな」

成助が分別ありげに云った、「彼らは自分たちで品を動かそうとしております、もし監察使の来ることがわかったら梃でも動かなくなるでしょう」

「もちろんすべて極秘だ、二人が品を出ししぶったら禁令品蔵匿で縛る手もある、とにかく金の手配を急いでもらおう」

そのとき突然「聞いたぞ聞いたぞ」という声がした。三人は仰天の余りほとんどとび上がりそうになった、蓑賀殿は刀をつかんで、「なに奴だ」と云いながら見まわしたが、部屋の中には彼らのほかになに者もいない、「はてふしぎ――」三人が思わず眼を見交わしたとき、

「おいここだここだ、眼の前だよ」

という声がした。

「ほら私だよ、見えないのかい」

こう云って食膳の上の燗徳利がぐらぐらと左右へ揺れた。三人はもういちど仰天し愕然としたうえ身震いをした。