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さんあくにんものがたり

三悪人物語

山本 周五郎

忍術千一夜 第二話

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,990 字 · 58 页

青空文庫

六

と呼ばれているが、その井戸の向こうを右へだらだらと下り、松林の中へはいるとすぐに一軒の家がみえる。

「あれだよ」

権頭が中将にこうささやいた、

「静かにいってみよう、またきっと金勘定をしているにちげえねえ、杢、この着物を持ってくれ」

三人は大根畑のほうから足音を忍ばせて近寄った。――家はまだ建てたばかりで新しいが、二十坪余りの隠居所といった感じのものだ、権頭は先に立って、かすかに燈明かりの漏れている部屋の外へ近寄った。中将に「聞いてみろ」という手まねをする、中将は耳を傾げた。なるほど聞こえる、ちん、ちん……紛れもなく小判の音である、中将はごくりと唾をのんだ、そして蔀戸へすり寄って中をのぞいた。家の中には短檠をかかげて、一人の若者がいま金を数えている。権頭のいわゆるずぶ若え銀流しなる者だろう、すばらしい美男だし、身装も贅を尽くしている、ああ顔をあげましたぞ諸君、御覧あれわれらの主人公、かの玉造八百助でござる。

六

三人は凍てる大根畑にしゃがんで、襲撃の方法を打ち合わせた。三人はいま息をはずませている、彼らはその眼で見た、部屋の中に積んである千両箱の山を、それは間もなく三人の所有に属するだろう。