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さんがつのそらのした

三月の空の下

小川 未明

「民政」1934(昭和9)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,005 字 · 6 页

青空文庫

」と、老人は、つぶやきました。

「お気の毒ですけれど、先生はたいへんお忙しいので、みられんとおっしゃいますから、よそのお医者さまへいってくださいまし。」と、看護婦は、そういいました。

「ははあ、よそのものはみても、私をばみられないとおっしゃるのだな。どうせ、この老耄はくたばるのだからいいけれど、そうした道理というものはないはずじゃ。もう私は歩けないが、どこか近所に、お医者さまはありますかい。」と、老人は、やっと小さな荷物をせおってから、ききました。

「じき、すこしゆくとにぎやかな町になります。そこには、幾軒もお医者さまがあります。」

少女は、暗い外の方を指して、町へ出る方向をおじいさんに教えました。ところどころに点いている街燈の光が見えるだけで、あとは風の音が聞こえるばかりでした。

ちょうど、その時分、B医師は、暗い路を考えながら下を向いて歩いてきました。彼は、いま往診した、哀れな子供のことについて、さまざまのことを思っていたのです。

その家は貧しくて、かぜから肺炎を併発したのに手当ても十分することができなかった。小さな火鉢にわずかばかりの炭をたいたのでは、湯気を立てることすら不十分で、もとより室を暖めるだけの力はなかった。