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さんがつようかはおんなのひだ
三月八日は女の日だ
宮本 百合子
「改造」1931(昭和6)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,115 字 · 21 页
飛び交う数字と一種名状すべからざる緊張した熱意で飽和している空気の中をそっと、一人の婦人党員が舞台から日本女のところへきた。彼女は日本女の耳に口をつけて云った。
――ようこそ! どこからです?
――日本から。
囁きかえした。
――代表ですか?
――いいえ。
――舞台の上へいらっしゃいな。もし演説して下さると非常にいいんだが――
六七百人入っているのだ。
日本女は辞退した。婦人党員はわきにしゃがんで日本女の膝の上へ持ってたハギトリ帖と鉛筆をのせた。
――では、どうぞ名と職業を書いて下さい。
彼女は、日本女が耳で演説をききながら下手な字で「日本。作家、ユリ・チュウジォ」と書くのを熱心に見ていたが、手帖をもって立ち上りぎわ、低い声に力をこめて、
――ありがとう!
と云った。
あなたが今夜来られたのは満足です。
捲き上げるような拍手とインターナショナル第一節の奏楽が起った。演説が終ったのだ。演説者の小柄な婦人党員は水さしから一杯水をのみ、鎌と槌を様式化した演壇から議長のいるテーブルへかえって行った。
くつろぎが広間じゅうにひろがった。
日本女はリノリューム敷の通路を隔て左側の坐席にいる四十ばかりの太い拇指をした男にきいた。