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さんかくけいのきょうふ
三角形の恐怖
海野 十三
「無線電話」1927(昭和2)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,969 字 · 24 页
いたに違いはないのです。
たとえばですね、時計の指針は一日に数十回に渡って鋭角を形作ります。窓から陽が斜に入れば三角形の影が沢山出来るわけです。用箋を繰れば、偶然に枠が傾斜をして紙と縁と三角形をなしていることもないとは言い切れぬことです。万年筆の尖も三角なら、女のひたいも三角形をなしているのでしょう。それからそれへと限りなくこの最も簡単な空間は細田氏の前に展開して氏の恐怖は地獄を駆けまわっていたことでしょう。
細田氏が家から一歩も出ないという事が判ると私は更に手段を講じて氏を又別の方法で脅迫することを忘れませんでした。配達された郵便物の上に無気味な三角のマークをつけることも、少々冒険ではありましたが、やって見ました。これは帽子もかむらず勝手口の傍で草でもむしっているような恰好をすれば、郵便配達夫は何の疑いもなく郵便物を私に手渡して呉れます。また細田氏の窓に三角形の凧を飛ばせて引っかけたり、子供たちに紙でつくった三角形の帽子を被らせて庭で遊ばせたり、いろいろなことを試みました。
しかし折角の試みも細田氏が外に姿を現わさないので、その恐怖がどの位まで氏に影響しているかを明らさまに知ることは六ヶ敷いことでした。