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さぶろうじい

三郎爺

宮本 百合子

「東京日日新聞」1918(大正7)1月5日~17日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,866 字 · 50 页

青空文庫

その、禁制の鐘を見ながら、やや暫く首を捻っていた彼は、何と思ったのか急にそわそわしだすと、堪らなそうに首をすくめてほくそ笑むなり、どこへか駆け出した。そして瞬く間に六七人の仲間を引きつれて来ると、一人が納屋から古俵を持ち出す、他の者が細引きを引きずり出す、枯木を集めるもの、火打石をさがすもの、見る見るうちに、何だかものものしい仕度が出来上った。

すると、皆が丸くなって「じゃんけん」をする、負けた一人が、本堂傍の梁へ吊るした古俵の中へゴソゴソと這い込むと、庭で枯木へ火をつけた一人が真剣な声を張りあげて、

「火事だぞーッ、火事あおっぱじまったぞー!」

と、いきなり怒鳴り始めた。

すると梁から下った俵の傍らに、和尚の杖の折れを握って立っていたのが、荘重な手つきで古俵を突く。

一つ突くとゴーンと鳴る。

二つ突つけば、ゴーンゴーンと二つ鳴り渡る。

三郎坊主の発議で、皆な火事の真似を始めたのである。もう五十何年かの昔、奥州の山中に火事などはめったにない。中には、火事がどんなものだか知らなかった子供さえいるのだから、これには皆な有頂天になった。そして、傍から燃火をドンドン加えながら、盛に、