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シャンペン
三鞭酒
宮本 百合子
「婦人倶楽部」1927(昭和2)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,269 字 · 5 页
土曜・日曜でないので、食堂は寧ろがらあきであった。我々のところから斜彼方に、一組英国人の家族が静に食事している。あと二三組隅々に散らばって見えるぎりだ。涼しい夏の夜を白服の給仕が、食器棚の鏡にメロンが映っている前に、閑散そうに佇んでいる。
「――寂しいわね、ホテルも、これでは」
「――第一、これが」
友達は、自分の前にある皿を眼で示した。
「ちっとも美味しくありゃしない。――滑稽だな、遙々第一公式で出かけて来て、こんなものを食べさせられるんじゃあ」
「食い辛棒落胆の光景かね」
「いやなひと!」
三人は、がらんとした広間の空気に遠慮して低く笑った。
「寂しくって、大きな声で笑いも出来ない。いやんなっちゃうな」
「まあそう云わずにいらっしゃい、今に何とかなるだろうから」
時刻が移るにつれ、人の数は殖えた。が、その晩はどういうものか、ひどくつまらない外国の商人風な男女ばかりであった。
「せめて、視覚でも満足させたいな。これはまあ、どうしたことだ」
「――お互よ、向うでも我々を見てそう云っているに違いないわ」
陽気になりたい気持がたっぷりなのに、周囲がそれに適せず、妙にこじれそうにさえなった時であった。