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ふざいじぬし
不在地主
小林 多喜二
一~十一、十六「中央公論」1929(昭和4)年11月号、十二~十五(「戦い」の表題で。)「戦記」1929(昭和4)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,990 字 · 141 页
――もッと別なことが、色々その中にある気がした。
S村と小樽、これをキヌが考えさせる!
九
「なア、お内儀さん達よ――」
岸野から返事が来た。
伴のところへ、吉本から人が呼びに来た。――それと、健がキヌの葬式に出掛けて行く途中会った。
「聞かなくても分ってるんだ。」と伴が云った。
「岸野のこッた。――帰りに寄る。」
勝の家の前で、父の一人一人ちがった兄弟が田の引水をせきとめて、鮒をすくっていた。身体をすっかり泥水に濡らして、臍のあたりについている泥が白く乾いていた。
「愛子オ。」――男の子が呼んだ。
「何アに。」
「愛子あ――とて、あれきあんだれき、ありやのあり糞!」
女の子も負けてはいない。「源一げんとて、げりき、けんだれき、げりやのげり糞! やあ、げり糞、げり糞!」
愈だ! 健は恐ろしいような、心臓のあたりをくすぐられるような気持になっていた。
――吉本管理人は伴の顔をみると、
「見ろ!」と云って、眼の前に手紙を投げて寄こした。「あんなことを云ってやったから、見れ、かえって片意地にさせてしまった。――んだから、馬鹿だって云うんだ。」
狸奴! 俺達の云った通りのことを、貴様が正直に書いてやったと誰が思ってる! 手前が自分の立場が可愛くて、小作人が飛んでもないことやらかしてるッて、有る事、無い事、嘘八百