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ふざいじぬし
不在地主
小林 多喜二
一~十一、十六「中央公論」1929(昭和4)年11月号、十二~十五(「戦い」の表題で。)「戦記」1929(昭和4)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,990 字 · 141 页
並べてやったんでないか。順序が順序だから、手前のような奴を中にはさんだんだ!――
伴は手紙を懐に入れると、吉本に挨拶もしないで外へ出た。
「騒いだりしたら損だど。――分ってるべ、ん?」
出かけに吉本が云った。――返事もしない。
こうなれア立場としては吉本は、可哀相なほどオロオロだ。様ア見ろッ!
伴の家には、五、六人集っていた。――健も居た。健は伴に会ってから、葬式どころでないと思って、顔だけ出すと、直ぐこっちへ廻ってきた。――自分も変ったな、と思った。キヌだって分ってくれるさ、と思った。
そこへ伴が帰ってきた。皆伴を見た。
瞬間、鋭い緊張がグイと皆を抑えた。
「ウハハハハハ。」
戸口に立ったまま、何んの前触れもなく、伴は大声で笑った。そして懐から手紙を出すと、「ここまでお出で」をするように振ってみせた。
「駄目ッ!」ぶッつり切った。
皆はつられたように、「駄目か!」「やッぱり!」「んか。」「駄目か!」口々に云った。――肩から力がガックリ抜けた。
「で、こんなものモウどうでもいいこった。――第二だ。」
伴は皆の真中に大きく安坐をかいた。
阿部は眼鏡を出してきて、ゆっくり手紙を読んだ。