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ふざいじぬし
不在地主
小林 多喜二
一~十一、十六「中央公論」1929(昭和4)年11月号、十二~十五(「戦い」の表題で。)「戦記」1929(昭和4)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,990 字 · 141 页
「――※(感嘆符疑問符、1-8-78)」
健はグイとこみ上ってきた気持をどうすることも出来ない。
「なんぼなんでも、涙が出て、とても貰えないよ。」
阿部も「分る! 気持だけで沢山だ!」と、何時もの阿部らしくもなく、周章てたように押し戻した。
どんな事にでも直ぐ感激する伴は、何時迄も鼻をグズグズさせていた。
「な、どうだ、阿部君よ、勝たんばならないな!」
「驚いた! こっちから持って行ってやらなけアならない位の処から、持ってくるなんてなア! 矢張り、ああなると本当のことが、黙ってても分るんだな。」
健は身体に鳥膚が立つ程興奮を感じた。
伴の家では、伴のお内儀さんや阿部のお内儀さんも出て来て、てきぱきと家の中の細かい仕事を片付け、――暇々には、小作の家を廻って歩いて「女は女同志」その方からも結束を固めていた。
死んだキヌの妹は自分から手伝いに来ていた。伴のおかみさんと気心がよく合って、気持いい程仕事をしてくれた。ビラ書きを手伝ったりした。――顔はキヌとそのまま似ていた。が何時でもツンツンしているので、何んだ此奴と思って、健は嫌いな女だった。――然し、こんな時に節が出てきていてくれたら、と思うと、淋しかった。