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ふざいじぬし

不在地主

小林 多喜二

一~十一、十六「中央公論」1929(昭和4)年11月号、十二~十五(「戦い」の表題で。)「戦記」1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,990 字 · 141 页

青空文庫

「恐ろしいもんだな。」

「恐ろしいもんだよ。――何処で、どう関係があるか、表ばかりの云うことや、することを見ていたんじゃ分らないんだ。」

荒川が健から聞くとそう云った。「糸を手繰ると、飛んでもなく意外な奴が、実は一緒になってるもんだよ。」

学校では由三達が市街地の子供からいじめられた。

あの「温厚な人格者」の校長が(健は殊にそう思っていたのだ!)時間がある毎に、小作争議のことを「不祥事だ」「不祥事だ」と云った。「若しお前達の親や兄弟で、あんな悪いことをするものがあったら、やめさせるように一生ケン命お願いしなければならない。」

先生の云うことなら、どんな事でもそのまま信じこむ由三は、家へ帰ると健に泣きついた。――由三は学校へ行くと、いじめられるので時々休んだ。そして健のところへ来た。手紙を届けたり、ビラを配るのに手伝った。――「学校さ行ぐより、ウンとええわ。」

お恵は髪に油をテカテカつけたしゃれ男とブラブラしていた。

「兄ちゃば皆偉いッて云ってるど。」

健が遅く帰ってくると、腹這いになって、講談本を読みながら、見向きもしないで、ヘラヘラした調子で云った。