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ふざいじぬし
不在地主
小林 多喜二
一~十一、十六「中央公論」1929(昭和4)年11月号、十二~十五(「戦い」の表題で。)「戦記」1929(昭和4)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,990 字 · 141 页
いきなり大声で叱りつけられました。
これは意外でした。――私共は家を出るとき、皆さんにキット奥様の温いお言葉を頂いて帰ると云って来たのでした。
「お前等のために、この何十日ッてもの夜も満足に眠れたことがないんだ。――この恩知らず奴!」
私共は申しました。「いいえ奥様、貴女は夜もおちおち眠れないと仰言いましたが、それは然しただ眠れないだけのことでしょう。然し私共は一日一日が生きて行けるか、行けないかのことなんです。命がけのことなんです。」
だが、もう決してお前達には会わないし、云うこともきいてやらないから勝手にせ! とうとうそう云ってしまいました。――涙ながらに語った。
かくして岸野小作争議は、「社会的」に益※(二の字点、1-2-22)深刻を極めて行くものの如くである。
十四
「解散! 解散※(感嘆符二つ、1-8-75)」
「演説会」が開かれた。健は組合の人や阿部、伴などと一緒に、劇場の裏口から入った。入口で巡査から一々懐や袂を調べられた。
「よし。」そう云って背中を押す。
「何が、よしだ!」――健にはグッと来た。
「御苦労さんだな!」――組合員は小馬鹿にした調子を無遠慮にタタキつけて、ドンドン入って行く。