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ふざいじぬし
不在地主
小林 多喜二
一~十一、十六「中央公論」1929(昭和4)年11月号、十二~十五(「戦い」の表題で。)「戦記」1929(昭和4)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,990 字 · 141 页
北海道は町村が沢山の田畑を所有していて、それに小作を入地させていた。それで、よく村相手の争議が起った。――然しS村の村会議員が全部地主であったために、後のこともあり、又やがては自分達の方への飛火をも恐れて、頑強に対峙してきたために、惨めに破れたことがあった。
「明日吉本さんの処さでも集って、相談すべアって。」
おはぐろの塗りのはげた母親の、並びの悪い歯の間に、飯が白く残っていた。
「………………。」
健は塩鱒の切はしを、せッかちにジュウ、ジュウ焼いて、真黒い麦飯にお湯をかけて、ザブザブかッこんだ。
風が出てきたらしく、ランプが軽く揺れた。後の泥壁に大きくうつッている皆の影が、その度に、あやつられるように延びたり、ちぢんだりした。
由三は焚火に両足をたてて、うつらうつらしていた。
「母、いたこッて何んだ?――山利さいたこ来てな、今日お父ばおろして貰ったけな、お父今死んで、火の苦しみば苦しんでるんだとよ。」
「本当か?」
「いたこッて婆だべ。いたこ婆ッてんだべ。――いたこ婆さ上げるんだッて、山利で油揚ばこしらえてたど。」
「お稲荷様だべ。」
「お稲荷様ッて狐だべ。