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ふしぎなとり

不思議な鳥

小川 未明

「趣味」1910(明治43)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,797 字 · 16 页

青空文庫

「ああ、己もあんな時代があったのだ。」……其様空想に耽っていると、日は蔭って、小鳥は囀るのを止めてしまった。

「日が蔭って、晩方の風は寒い、早く家へ入れてやるぞ。」

と老人は独言をいって、籠を柱から外すと、大事に捧げて、自分等が臥る居間に持て行く。その時も小鳥は頭を傾げて、不思議そうに老人の顔や、家の暗い様子などを眺めながら……薄紅い胸の温毛を動悸に波打たせていた。老人はこの小鳥の可憐らしい様子を見て、

「おお、怖くない。」といった。

この老夫婦には子もなければ、孫もなかった。夕飯の膳には、白い湯気が微かに上って、物静かに済むと、暗いランプの光りが煤けた一間を照す。室の隅に置かれた小鳥はランプの火影に驚いて黒い円な眼を見張って撞木を渡り始める。

「夜だぞ、こうやって休め。」といって、老人は風呂敷を持て来て籠の上から掛けてやる。風呂敷を掛けられると、又急に籠の中は薄暗くなって、鳥の動くのが静ってしまう。

老人は眠る時、鳥籠を枕許に持って来る。鼠が出るのを心配した。頭を枕に付けて、まだ眠らずにいると外を通る人々の足音が聞える。隣の蝋燭屋では話声に混って笑声などがしていた。