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ふしぎなとり
不思議な鳥
小川 未明
「趣味」1910(明治43)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,797 字 · 16 页
「己あ、小鳥を町へ売に行くだ。」
といって、懐から、さも大事そうに、壊れ物でも取出すように握り出した。それは翼を包んで、頭を穴から出して逃げないように紙の衣を着せた小鳥であった。
「黒い鳥だな、……何という鳥だ。」と聞いた。
吉太はさも大事そうに、自分の心臓でも掌に載せているように、雪焼のした汚らしい手を戦わしていた。で、私の言ったことなどに耳を傾けていなかった。吉太は、こうやっている間にも幾度となく、唇を掌に寄せて暖かな息を鳥に吹かけた。
「己にその小鳥を売てくれないか。」
と、余り珍らしい鳥なものでこういった。けれど私はこの鳥を見た時、好い気持がしなかった。何んだか再び眼から印象の消えない物を見せられたような気がして、急に心持が暗くなるのを覚えた。しかし、この儘、この鳥を他人に渡してしまうのも惜しいような気がしたので、自分で飼てみたくなった。吉太は私の顔を見ていたが、
「貴君になら売るのは厭だ。」
「何故?」
町へ売に行くのを、何故自分に売るのが厭だろう。吉太の性質が曲っているのを証明するものでないか? それとも町へ行ったら思い切り高く売れるが、知っている人にはそうは行かぬ所から、自分に売るのを厭だというのでないかと思ったから、