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おかのうえ

丘の上

豊島 与志雄

「女性」1925(大正14)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,034 字 · 23 页

青空文庫

何かを真中にして、一群の人々は円く立並んでいた。松林の中から、なお一人二人ずつ出てきて、その円陣に加わっていった。その真中のが、波に打寄せられ引上げられた、水死人だった。

水死人は波打際から二三尺のところに、仰向に転っていた。濡れた古蓆が一枚上に被せてあった。蓆からはみ出してるのは、額から上の頭部と、膝から下とだけだった。長い髪の毛が、磯に打上げられた海藻のように、毛並を揃えながらうねりくねって、変に赤茶けた色をしていた。膝から下はむき出しで、紫色にふくれ上っていた。押したら風船玉のように破けそうなほど、薄い皮膚が張りきっていた。胴体は鮪か※のように、蓆の下から円っこくふくれ上っていた。

晴れやかな日の光に、蓆からぽっぽっと湯気が立っていた。何で濡れ蓆を被せたのか不思議だったが、その時それが、丁度大きな魚にでも被せたように、如何にも調和して落付いていた。

一人二人ずつ人立がふえてゆくきりで、誰もどうしようという考えもないらしく、無関心なぼんやりした眼付で、黙ってうち眺めていた。すぐ側には、軽やかな波がさーっさっと、砂浜に寄せては返していた。そして初秋の澄みきった日の光が、あたり一面を包み込んでいた。