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ちゅうごくにおけるふたりのアメリカふじん

中国に於ける二人のアメリカ婦人

宮本 百合子

アグネス・スメドレーとパァル・バック

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,004 字 · 16 页

青空文庫

バックの最近の作「闘える天使」をよむと、彼女には、もう一つの発展の契機がのこされていることが分る。それは主として境遇的なのである。バックは中国の拳匪の乱にふれた箇処でこう云っている。彼女の父「アンドリウのごとき人物の行為は、たとえ高潔な目的と善良な意志から出た正義にもとづくものとしても、一種の帝国主義として許し難い。――と理性は認めることが出来る。しかも心は戦慄せざるを得ない。なぜなら、その帝国主義排斥のまとになって殉教した人々は善良かつ悪意のない人々であったからである――彼等は盲目的であったが、そのために善良かつ悪意のなかったことに累を及ぼす筈がない。」そして、バックは「これ等二つのもの――理性と心の声は決して妥協できない」理性と心情とは互に正当性を主張して「水掛論になる。正当な断案は下さない」と云って、そのまま次に進んでいるのである。バックには、この作品ではまだ語らずにいる「断案」を次の作のために用意しているのかもしれない。次の作品の主題として「闘える天使」の中では注意ぶかく埋められてあるものなのかもしれない。それにしても、この作品の根本的な限界はキリスト教の信仰そのものへの分析が行われていないことと、この理性と心との対立の中に認められる。