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ちゅうがくへあがったひ

中学へ上がった日

小川 未明

「台湾日日新報」1939(昭和14)年4月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,232 字 · 5 页

青空文庫

「君は、どこへ入ったのだい。」と、宮田は、ききました。

「僕は、中学へ入ったけれど、ついていけるか心配なんだよ。」

「君は、だいじょうぶさ。」

「それに、君は、体が弱いんだものね。」と、哲夫は、なぐさめました。

「働けば、体が達者になるって、お母さんがいったよ。」

二人は、途中で、右と左に別れました。哲夫は、また中学の入学試験にきていた不幸な少年を思い出したのです。当日、哲夫は、お母さんにつれられていったが、控え室に松葉づえをついた少年が、姉さんにつれられていっていました。ほかの少年たちが元気でいるのに、その少年は、青白い顔をして、弱々しそうでした。そのうちに、ベルが鳴って、試験場へ入るときがきました。「おちついて、しっかりおやり。」とか、「よく問題を見て、あわててはいけません。」とか、いう声が、そこここできかれました。哲夫は、お母さんを残していきかけると、松葉づえの少年もいっしょにいきかけました。

「だいじょうぶかい、おまえは、できなくてもいいんだよ。」と、姉さんが、少年の耳に口をつけていっていました。これをきいたとき、哲夫は胸が熱くなりました。試験場へ入ると、すべてのことを忘れてしまいました。