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ちゅうよう
中庸
「群像 第八巻第六号」1953(昭和28)年6月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,104 字 · 33 页
余がそこを訪ねると、真っ先に顔を合せたのは先日の男教員で、彼は甚だしく憎悪をこめて余を睨んだ。彼は禅寺の下宿人であった。
「小学校の教員は犬ですか。土間で事務をとり、土間に藁をしいて宿直することになったそうですね。あなたは刑務所を見ましたか。人間の住むところは、牢屋でもちゃんと床がありますぜ。変な顔をしてますね。私の云うことが変梃に聴えますか」
彼が犬属にあらざることを示威することには同感できるが、その見幕には同感ができない。それはたしかにほぼ犬的であった。戒厳令下の消防団員や村会議員と同じように、牙をむく犬にほかならぬと思った。
余は犬に返答することを欲しないので、マリ子を探した。マリ子は人を避けて、裏の山に登ったという。裏の山は墓地であった。
マリ子は墓石の一つに腰かけて、目玉をむいて、腕を組んでいた。近づく余をじっと見つめているから、余も苦笑した。
「今日はどこへ行っても睨まれるばかりさ」
「私のはたばこがきれてるせい」
にこりともしない顔が、睨む目をそらして呟いた。
「私は御承知の如く無為無能の村長だから、村長たる力によってあなたに何もしてあげることができない。