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ちゅうしゆうき
中支遊記
上村 松園
「画房随筆」錦城出版社、1942(昭和17)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,238 字 · 13 页
田圃には翼を悠々とうって丹頂の鶴が舞っている。澄み透るような静かな陽射し、このさまをみては武陵桃源という文字もありそうなことだと思うし、白髪の仙人が瑟をもった童児を従えている図も絵空ごととは思えない風景である。
またしても思うのは戦争など何処でしているということである。野鳥も打たれぬ風習に狎れ、悠々と自然のなかに溶けこんでいる。これが支那の本来の姿なら、これをわれから好んで戦禍に巻きこんでいった為政者の罪は一目でわかることである。白い紙をいたずらに墨で汚しているような勿体なさと、押しあげて来る憤りに似たものが私にも湧いた。
楊州でお目にかかった兵隊さん達はもうすっかりお友達になってしまい、その夜は楊州に宿って明朝蘇州にゆくのだというと、どうでも部隊にとまれとまれと熱心にすすめた。部隊だって立派な設備があるから不自由はさせないと、まるで久々に来た親類の者をとめでもしているように無邪気に明るい人々であった。出来るだけ各地の部隊病院はお訪ねしたいと思っては来たが、私の場合は慰問という字はあてはまらないかも知れない。かえって兵隊さん達に親切にされる、それをよろこんでお受けする、それで兵隊さん達が満足される、それをせめてもに思って貰うほかはないといった塩梅である。