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ちゅうしゆうき

中支遊記

上村 松園

「画房随筆」錦城出版社、1942(昭和17)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,238 字 · 13 页

青空文庫

病院でも年寄の女がはるばる来たというためでもあろうか、白衣の方々を一堂に集めて挨拶をお受けしたりした。これではまるで逆になり、勿体なくて困るので、次からは集って頂くのは遠慮することにして貰った。

蘇州にて

陳さんの家では菊の真っ盛りであった。京都でも今頃はそうだろうと思うよりも、支那にこんな立派な菊の育て方があったのかと不意をうたれた気持の方が先であった。陳さんは前の省長で私達は御馳走になったうえに御家族の方々とこの立派な菊の鉢を前にして写真を写して貰ったりした。菊はほとんど私の肩にも及ぶほどであった。

此処では妙なことから支那の田舎芝居の楽屋で写生帖をひらいたりした。

お迎えをうけた特務機関長がお話好きで、あれこれと時間を過ごしたのだが、話が丁度支那芝居のことにおち、それでは一度御覧なさいということになり、秘書を案内に貸して下さった。

楽屋は二階をあがったりおりたり、特有な臭をおしわけてゆくような処で、日本でいう大部屋という感じだった。チャリも三枚目も女形も大将軍も一部屋にごちゃごちゃと座を持っていた。

私が写生帖をひらき皇帝になる役者を写し始めると、ほかの者もよって来てあれこれと批評している。