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ちゅうしゆうき
中支遊記
上村 松園
「画房随筆」錦城出版社、1942(昭和17)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,238 字 · 13 页
「アスモートに御注意下さい」
という。足許といっているのである。そして見物し終ると、これも日本語で、
「案内賃下さい」
と、片手をつき出して実にはっきりと事務の如くにいう。ほかに十二、三の男の子も案内にたっているのだが、とてもこの敏捷な幼い女の子には敵わない。男の子がうしろの方でもじもじしている間に、女の子はさっさと一行の案内賃を請求しているのである。私達は笑いながら銭をつかませてやった。
蘇州の寒山寺、獅子林、明孝陵。鎮江金山寺、杭州の浄慈寺、それに前に書いた平仙寺、雲林寺という風で、従って仏像も沢山見た。実に沢山ある。だがそれは数ばかりでその容姿風貌には日本の仏像のように尊いところがなかった。これらの仏像がつくられた頃から、支那の現在の国運はすでに定っていたのかも知れない。
南京にて
十三日。南京に着いて宿舎に憩う暇もなく汪精衛主席に会う都合がついたからと公館に挨拶に出かけることになった。
此処も数限りない菊の真っ盛りであった。大きな亀甲模様の床、深々とした椅子、その大広間にも菊の鉢がずらりと並んでいた。
汪主席はかねて美術に理解のある方だと聞き知っていたが、眼にとまるところに砂子地に鶴を描いた六曲屏風が据えられていた。