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『ケプロン・くろだのこうそう』について
中谷宇吉郎集 第八巻
中谷 宇吉郎
中谷宇吉郎『中谷宇吉郎集 第八巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:『ケプロン・黒田の構想』について、桂浜、北国の春、金鱗湖、高度八十マイル、写真と暮らした三十年、寅彦の遺跡、南極・北極・熱帯の雪、百科事典美談、北海道開発に消えた八百億円、母性愛の蟹、娘の結婚、雪の化石2、六三制を活かす道、ピーター・パン。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 85,890 字 · 178 页
その鼠の行動や表情には、宙に浮いているという点以外には、なんら変ったところが見られなかった。それで重力の無い世界は、生理的に安全であるばかりでなく、神経的にも決して心配する必要はないらしいということになった。もっとも人間と鼠とは違うかもしれないが、もし違ったとしたら、それはどうも、人間は心配性というよけいなものをもっているため、ということになりそうである。
こういう研究は、超音速飛行に関する航空医学の研究としてなされているのであるが、同時に宇宙旅行用ロケットの研究の一部にもなる。
宇宙旅行の研究に、猿を八十マイルの高空まで打ちあげたり、鼠が宙に浮いたまま遊んでいる映画を撮ったりするというのは、ちょっと俳味があって、なかなかよろしい。アメリカの科学者の中にも、しゃれた研究をする男がいるものである。(昭和二十八年六月)
付記
この文章は、昭和二十八年、すなわち今から五年前に書いたものである。昨年ソ連が人工衛星に犬を乗せて飛ばすことに成功した時、日本では「宇宙時代」来るといって、大騒ぎをした。そのこと自身は、科学の一大勝利であって、大いに騒いでよいことであるが、その騒ぎかたに、何か浮ついたところがあるように感ぜられた。