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なかざとかいざんの『だいぼさつとうげ』

中里介山の『大菩薩峠』

三田村 鳶魚

「日本及日本人」1932(昭和7)年10月15日号、11月1日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,523 字 · 27 页

青空文庫

五五〇頁になって、「こんな大家の財産と内幕は、わたし達の頭では目当が附きません」ということがある。今日からみると、何でもないようなことであるけれども、この時分の田舎の女が、「わたし達の頭」なんて、「頭」ということを持ち出すのはおかしい。時代離れがしている。ここで前の娘のことを、「お嬢様」と言っているのも、奥様同様百姓家には不釣合である。

五五四頁に、お銀という娘の言葉として、「あの娘は綺麗な子であつたわいな」ということがある。「わいな」なんぞも、随分変な言葉だと思う。

それからこの百姓大尽の家に使われている幸内という若い者のことを書いて、「見ると幸内は小薩張した袷に小紋の羽織を引かけて」云々(五五六頁)といっている。百姓の家に使われている者などが、小紋の羽織を着るものか、着るものでないか。

五五七頁に、お銀がお君という女中を呼んで来いと言う。それを傍輩の女中が羨しがって「お前さんばかり、そんなお沙汰があつたのだから」と言っている。こういうことは武士の家でも、よほどいいところでなければいけない。お沙汰という言葉が、どんな場合に用いられているか、少し昔のものを見れば、すぐわかる話です。