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ふたつのさくひん
二つの作品
国枝 史郎
「探偵趣味」1926(大正15)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,364 字 · 3 页
いずれ荒っぽい土木工場などへ、贋勅使となって入り込むような人間、肩書があるに相違ありません。だから努めて此場合、肩書を出さない方が可いようです。これ等の言葉があった為め、鳥渡作の味が古態を帯びました。何んでも無いようなことではあるが、何んでもないことではありませんね。こういう点に留意するのが、文章道のカナメです。……などと如何にも此私が、文章道の苦労人らしく、こんな注意をするというものは、それこそ場違いかもしれませんなあ。本当の参事官の一行が一週間後にやって来た時、悄げきって多くの工人達が「疑惑に充ちた冷眼」で、見迎えたというあのあたりは、素晴らしく精彩を発揮して居ります。「疑惑に充ちた」という言葉など、使えそうで使えない言葉です。この言葉があった為め、疑惑に充ちた工人の姿が、私の眼前に一整に、見えて来たものでございますよ。贋勅使だと宣る迄、贋勅使の一行が、贋勅使に見えなかったのは、勝れた作者の技倆でしょう。尤も夫れが解って了っては、この作の値打は消えますがね。
羽志主水? 聞かない名です。こっそり雨村さんへ手紙を出し、その本名を聞こうかしら? この材料、この作風、日本探偵小説界に、一新境地を開いたと迄、大袈裟な言葉使いはしませんが、宝石の知識も無い癖に、宝石のことなどを書きたがる、去勢されたる探偵小説