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ふたつのいえをつなぐかいそう
二つの家を繋ぐ回想
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第十八巻」新日本出版社、1981(昭和56)年5月30日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,480 字 · 37 页
その時の、罪のない亢奮!
光景が、活々と目に現れた。その団欒の裡から、あの、真に物を遣れる者を持つ悦ばしさ、共に歓ぶ嬉しさを味う歳末の夜から、自分がのけられ、小さい唯三人限りの家で、ひっそりと笑いもせずに其晩を送るのかと思うと、何とも云えない心持がした。
林町へ行くことが出来なければ、兎に角何処へか行かずには居られない。到底、此家に、吉祥寺の一〇八の鐘を聞いて坐っては居られない。
早くから、自分はAに
「大晦日には、吉田さんの処へでも行きましょう。紐育の連中が皆、集ろうじゃあないの」
と提議した。
Aも、黙ってこそは居るが、同じ心持らしい。早速承知をし、吉田さんの処へ行って相談をまとめた。大晦日の七時頃から、夜中まで、皆で賑やかに、笑い騒ごうと云うのである。
それで先ず大晦日の苦しさから丈は逃がれられた。正月号の太陽に出そうと思うものがあるので、幾分か其仕事にまぎれたが、自分の心は、ちょいちょいそのことに関した感想を書かずに居られない程オキュパイされた。
丁度その最中、祖母の八十の祝いが迫って来た。
以前からその話はあった。が、祖母自身がやめろやめろと云われるのと、父上の多忙から、ついのびて居たのであった。