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ふたつのにわ
二つの庭
宮本 百合子
「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页
もっと大きな声で願います、といわれながらやっとそれだけいったときの、のぼせたせつなさを思って、今も、伸子は腋の下がしっとりとするのであった。
いいあんばいに司会者は、伸子を指名しなかった。日本側の婦人客が話し出してから、中国女学生たちは、礼儀上しずかになって、その話をきいた。が、一座には、親睦の雰囲気は最後までかもし出されなかった。伸子が不服をもったこころを胸にたたんでいるとおり、中国女学生たちの顔々には、なんのための会だったのかといぶかしがり、不満がっている表情がありありと浮んでいた。挨拶が終ると、またすぐ中国女学生たちは仲間で話し出し、それは批判的な内容であることが、言葉のニュアンスや顔つきで、伸子にも感じられた。一九二七年というその年の二月末には上海の大ストライキがあった。その結果臨時革命委員会というものができて上海市の政治が中国労働者によって行われはじめた。その新聞記事を、伸子は目をみはってよんだ。北伐軍が南京で日本の陸戦隊と衝突し、漢口でも同じようなことがおこった。間もなく蒋介石の弾圧がはじまって、上海、広東その他で革命的な指導者や大衆が多量的に虐殺された。