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ふたつのにわ

二つの庭

宮本 百合子

「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页

青空文庫

虐殺された民衆のなかには革命的な女学生もあることを、伸子はやはり新聞でよんで知っていた。官費で勉強している師範学校の女学生たちであるきょうの中国女学生たちは、そういう激しい中国の動きにどういう関心をもっているかはわからない。けれども激動する中国の空気はこれらの若い女学生の精神を敏感にしていることだけはたしかだった。彼女たちが、孔子の話に腹立つ感情は伸子にも実感されるのだった。

散会となったとき、中国女学生たちのほとんど一人も早川閑次郎の方はかえりみず、互にしゃべりながら椅子から立ちあがり、街路を見下すその室の窓際へそのまま自分たちでかたまった。

十一

なぐさまない心持で、伸子はその新聞社の正面石段を一人で下りて来た。プラタナスの並木路をすこし歩いて、上野ゆきの電車にのった。市中へ出たついでに、動坂へよって泊ろうと思うのであった。

伸子のかけた座席はあいにく西日に向った側だった。ぎらついた光線は、電車の走ってゆく大通りの高いビルディングの前にさしかかった時だけはさえぎられ、またたちまち町並のすき間から、低い瓦の屋根屋根の上から、伸子の顔の真正面にきつくてりつけた。