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ふたつのにわ

二つの庭

宮本 百合子

「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页

青空文庫

思いきって、良人や小さい娘と東京をはなれる気になった多計代の心持も伸子には推測された。

「なんで行ったの?」

「僕が東京駅まで送って行って、あとは汽車」

「――さぞ大変な荷もつだったんだろう」

伸子は笑い出した。大小のトランクや風呂敷包みのほか、多計代のゆくところへはいつも水筒だのバスケットだのが欠かされなかった。そういうとき、母の大きい手提袋をもたされるのは、つや子であった。頭の上に大きいリボンをつけて、おしゃれをさせられながら、しまりのないおかしな恰好をした大きい袋をもたせられるとき、つや子はきまりわるそうにいやそうに眼を伏せて唇をかんだ。その一行が、ぞろぞろ東京駅に入ってゆく姿が目に見えた。

「いつ頃まであっちの予定?」

「さあ、はっきりしないんでしょう。当分お父様だけはあっちから事務所へ通うらしいけれど……」

「つや子の学校は?」

「一緒に月曜に出て来るんでしょう」

からだのよわいつや子は、家から近いというばかりでカソリック系統の女学校附属の小学校に通わされていた。同じカソリックの尼学校でも、貴族出の尼さんの学院、中流の尼さん女学校、又いく分その下に当るらしいつや子の学校の尼さんたちは、女生徒にたいしても人間ぽい好ききらいを露骨に示すらしかった。