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ふたつのにわ

二つの庭

宮本 百合子

「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页

青空文庫

「そうなんだ」

「――わたしには、やっぱりわかるようでわからない」

伸子は、真面目に考えこんで、じっと三人の垢だらけの若い顔々を見守った。

「私たちの一生って長いでしょう。社会の不公平だって長くつづくんだと思うわ、どうせ。そうだとすれば、その日その日、そうやって人のところからお金をとって来て暮していたって……結局、どっちの問題も解決しないじゃないのかしら。――」

ステッキをついている青年は黙って伸子をにらんだ。すると、ズボンとはちぐはぐな上衣をシャツの上から着ている一人が、

「面倒くせえなア」

と、乱暴に髪ののびた頭を掻いてからだをゆすぶった。

「わかっているんなら、つべこべいわずに出したらいいじゃないか」

伸子は、さっと顔に血の色をのぼせた。

「あなたがた、自分たちをゆすり同然に扱っていいの? 乞食が来たと思えば、黙ってお金だけやるわよ。あなたがたは、それとは、違うでしょう。少くとも主義というものがある以上、それについて、まともに話すということは、敬意なのよ。ゆするなら帰って下さい、ゆすられたりおどかされたりして出さなけれゃならないような金は、一銭だってわたしのところにはないんだから……」