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ふたつのにわ
二つの庭
宮本 百合子
「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页
「まだ……」
「その三四人のひとだけ書くの?」
「そうしようと思ってる」
「ほかのひとに書かせないの?」
「もちろん書かせたっていいんだけれど――」
癖で、紺絣の大きい膝をすこしゆすりながら、保は柔和なぽってりした上まぶたの下に眼を三白のようにした。
「みんな、すぐ猛烈に議論するんだもの、相手を一生懸命にまかそうとばかりするんだもの――」
「…………」
「こないだも、僕、佐々は馬鹿だ、ってみんなにいわれた」
保のそういう声のうちには、友だちにたいする反抗よりも、いうにいえない悲しみがこもっていた。伸子は、思わずその顔をのぞきこむような心になった。
「どうして?」
熱心にきいた。
「僕は、調停派なんだって。……佐々は生れつきの調停派だって――」
「それは、佐々はバカということになるの」
「そうらしい」
ちっとも皮肉なところなしに保は肯定した。
「調停派って――」
社会運動の歴史も知らない伸子には、どういう意味で高校の学生たちがその言葉をつかうかわからなかった。しかし、字の上から判断して、調停の意味は、だいたいわかる――、
「保さん、そんなに調停するの」
すこし笑って伸子がきいた。