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ふたつのにわ
二つの庭
宮本 百合子
「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页
といえなかった。ただ、トルストイによってあのように描かれたロシアの生活、チェホフの語ったあのロシアの感情、そしてチャイコフスキーの悲愴交響曲や胡桃割の舞踊曲がその諧調で世界のこころに刻みつけたあの胸せまるロシアが、新しいロシアになったということについては、深い深いおどろきと魅力とがあった。そのロシアへの国賓ということには、それに向って人々を注目させ、嫉妬させる刺戟がこもっている。せり合って、幾人かの国賓の中に加わろうとする心に、まじりけない憧れ、好学心しかないといえば、その無垢さはかえっておとぎ話めいた。日本における新しい国の代表とされている古い人――事実その東洋学者は若くなかったし、歴史的に新しい人でもないらしかった――おくれた日本という国の新しさを代表して国賓になろうとする人々のうちにある陳腐さ。あらゆる場合どこにでもあった陳腐さや浅薄をとおして、しかもなおそこに実現されようとしていることは、世界の歴史にこれまでなかった一つの光景なのだ。観光は、言葉そのものの意義を変化させようとしている。
素子と伸子とが、そろそろ帰らなければ、といい出す時分になって、俄雨がふり出した。