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ふたつのにわ

二つの庭

宮本 百合子

「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页

青空文庫

けれども、ああやって堂々として椅子にかけて話しているときの、近いようで遠い、わかったようで全く互にわかっていない感じは、何と変だろう。

伸子は、はたちのとき父につれられてニューヨークへ行った。その仕度の時のことを思いおこした。子供の時しか洋服を着ていない伸子の服装のことで、多計代はその相談を同窓生であり、つい先頃までペテルブルグに暮していた大使夫人のところへもちこんだ。そこには、最近フランス人を母にもった若夫人が嫁入って来ていた。その若夫人が相談相手になってやる、ということで、伸子は、一時間半も俥にゆられて、その家へ行かされた。そして、長椅子の上に華やかなクッションがどっさりおいてある客間で、お召の袖口に、重そうな金のくさり細工の腕環を見せている夫人に応待され、若夫人につれられて、レースの被いのかかったダブルベッドと衣裳箪笥でいっぱいになっているその夫人の寝室で、洋服の下縫いの検分をされた。半ばフランス人であり、半ば日本人であり、その半ばフランス人であるという面を優越として意識している美貌な若夫人のじっと見つめる視線の下で、遠慮ぶかく着物をぬぎ、むき出しになる伸子は自分の肩がやけどをするようにせつなかった。