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ふたつのにわ

二つの庭

宮本 百合子

「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页

青空文庫

素子が結論づけるように云うのだった。

「まあ、今のうちせいぜい勉強して、新しいロシアの小説でも読んでおく方がいいでしょう。どうせ、あすこのことだから、古くさいものばっかり読まされて来たんだろうから」

「じゃあね」

とうなずきあうようにして、蕗子とその友達とは帰って行った。

八畳の縁側の柱の下へ座蒲団をもち出して、竹村が、ひとりでたばこをふかしていた。

「や、どうも……」

素子が、そういいながら、紫檀の角机へ縞銘仙の袷のひじをついた。

「……この頃の若い女は、変って来たねえ」

素子が、ロシア文科にいたとき、その大学で上級生だった竹村は素子と男の友人同士の口をきいた。

「とにかく、経済的に独立して働かなけりゃならない、と思うようになって来ているんだから、大した進歩だ」

婦人の経済的独立の必要ということは、どの婦人雑誌でも扱う問題になっていた。実際に失業がそんなにひどい現実とのつながりでとりあげられず、厨川白村がしきりに書いている恋愛論のロマンティックな色彩の裏づけとなる条件のように、婦人の経済上の独立ということが扱われている傾きがあった。

素子と竹村とが、一人は縁側に、一人は卓の前に、はなれたところからしずかに二条のたばこの煙をただよわせながら、話している。