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ふたつのにわ

二つの庭

宮本 百合子

「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页

青空文庫

それをきいている伸子のところから、庭の片隅にある竹藪が見えた。どこかから鶏が雌鶏をつれてそこへ入って来て、遊んでいる。雄鶏はココココと真赤に重く垂れた肉髯をふるわしてのどをならしながら、つもっている落葉の間を掻きたてた。五月末の青竹の色とその間に動いている白い鶏の姿とは、閑散な午後の日のうつろいのうちにある。

竹村と話している素子の話しかたには、一種の調子があった。どんな男友達とでも素子が話すいつもの調子なのだが、その調子は素子がほかの女友達やワーリャを対手に話しているときの、まともで真実のこもったやりとりと、どこかちがった。素子は真率な人柄で、それだから男友達も多いのに、その男友達とのつきあいの間で、素子は、自分が女っぽく扱われその興味で見られるのをさけて来たあまり、不自然なほど自分を男っぽく表現した。言葉づかいばかりでなく、つき合う男友達の表芸の範囲でつき合わず、その人のくだけた面というか、普通女の友達には男の側から公表しない習慣にある生活面の方へ、自分からたち入った。

素子の友人の一人に加茂という信州の禅寺の若い住持があった。その人は、伸子たちの住居から遠くないところにある宗教大学の大学院にいた。