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ふたつのにわ
二つの庭
宮本 百合子
「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页
「いいとも。歓迎する」
「じゃ、なるたけ早く来るようにいうわ」
「それがいい。きりどきがあるから」
別の鍵を出して、竹村は住居の入口をあけた。土間に、テーブルと椅子と園芸用のごたごたがあって、右手が畳じきの六畳、四畳半になっていた。本箱、机、食卓。六畳にそういうものがおいてあって、次の室は寝室としてつかわれているらしかった。鉄金具の古い箪笥が見えた。土間のつづきに炊事場と風呂桶をおくところがあって、炭や薪が田舎らしく積みあげられている。小松菜と細根大根が、ぬいたままで、へっついわきに放り出してある。その明るく簡素な生活の仕組みを見て伸子はおどろく心持があった。素子と暮しはじめて間のないころ、はじめて竹村の家を訪ねたことがあった。よそからまわって、夕方近く竹村のところへ行った。竹村夫婦は、どこかの離室めいたところに暮していて、柴折戸のような門口から、飛石づたいにいきなり座敷の前に出た。軒近くまで庭木が茂りすぎて、土庇の長いその座敷は一層陰気に見えるなかに、気むずかしい顔で、眉の濃い竹村があぐらをかいていた。本がひろげたままおいてある卓が、二月堂だった。