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ふたつのにわ

二つの庭

宮本 百合子

「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页

青空文庫

うるさがりながら一つ室にいる方が素子の気持にとって自然なのだった。

「仕様がありゃしない」

やがて、素子も卓のところへ来て坐った。共通の先輩であるロシア語の教授が、最近のソヴェト文学について本を出した。竹村と素子は、その本の噂をした。話題はいくつか移ったが、気のりがせず、伸子はしばしば中座した。

とよに縫いもののつぎきれを出して座敷へ戻って来てみると、竹村があぐらをかいた膝の前に二つ折りにした盤をおいて、

「何だって――ピヨン、ピヨン?」

ヨをピと同じ大きさで発音している前に、重そうな髪を無造作に束ねた素子が腕組みして、むつかしい顔で坐っていた。

伸子は、その光景がなんだか滑稽で、

「出しかけたの?」

と笑った。

「ピヨン、ピヨンて――なんのことだろう」

「ヨをちぢめて飛ぶのよ」

「ピョンと?」

「そうだわ」

盤をあけてみて、竹村は、

「なんだ、これゃダイアモンド・ゲームじゃないか」

素子の顔をみた。

「そうさ」

「そうさ、もないもんだ。まあいいや、どうするんだって?」

ルールを素子が説明し、伸子が赤、素子が黄、竹村が青のコマをもって、一めずつとびながら遊びはじめた。