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ふたつのにわ

二つの庭

宮本 百合子

「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页

青空文庫

竹村のコマは一列だけとびはなれて前進し、素子の黄色陣地に迫った。

「どうだい、優勢だろう、この次は失敬して入城だよ」

「入城なもんか。あんたの陣に、そんなにぞっくりのこってるくせに。自分の陣からすっかり出きってからでなくちゃ、敵陣へは入れないんですよ」

「なあんだ! そんなことがあるんなら初めっからいっとくもんだよ、本当かな」

「あたりまえさ」

「そうですか?」

竹村は伸子にきいた。

「そうやってるわ、いつも」

「じゃあまア、これでも進軍させようか」

初めての竹村は、青いコマを盤の格子の上にいくつかのこして負けた。二度目に、竹村が、第一列のコマは、相手の陣の境界線の上まで行っていい筈だと主張した。

「そうじゃない、一本手前の線までさ」

「――これはダイアモンド・ゲームなんだろう」

「ああ」

「ダイアモンド・ゲームならそれがルールだよ」

「ダイアモンドだって、これはちがうんですよ、一本手前までしか行けないんだよ」

竹村と素子とは変に熱中して、互の手許を見はりながら競争した。

「そら、ぶこちゃん、もう一つ行けるじゃないか」

「何だ、小癪な。じゃ、こうだ、ほら、ぴょん、ぴょん、ぴょんと!」