轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ふたつのまつかわ

二つの松川

細井 吉造

「旅」1936(昭和11)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,511 字 · 10 页

青空文庫

やがて見上げるような大くずれの源流、ボロボロの川床、縦横に入り乱れるカモシカ道、スカイラインがじりじりと近づいて来る。森林帯のあえぎが終われば、まばら木立ちに立ち迷う霧の残兵を追って、深い熊笹の波を乗り越え、待望久しかった尾根に出る。脚下の松川は陥没した海の底の地盤のように一挙に遠い世界になってしまった。

里へ下ってから書く山行記録が既にして一つの回想録であるならば、二つの松川の接触点に当たる念丈岳と奥南岳との鞍部で送った甘美なる一夜についての思い出も語らなければならない。森林の領域から解放されたこの乗越は、風や霧の通り道だけでなく北国の鉛色の冬足に追われたツグミの群れが、南信濃から太平洋岸にかけて明るい生活を求めて渡る間道の一つでもあるのだ。中央アルプスの主稜に新雪の閃耀が反映するころになれば、乗越の熊笹の斜面はきつね色にこげるだろう。そうするとほとんど訪う者もなかったこの名もない峠に人の影が急に射して来る。その人影は、乗越の南斜面からはるかに遠く流れている飯田松川をまっすぐにさかのぼって来て、乗越の北斜面、与田切川源流に面してかすみ網を張るのだ。