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ふたりいるとき
二人いるとき
宮本 百合子
「新女苑」1938(昭和13)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,672 字 · 18 页
だからイタリー語は出来なくたっていいんでしょう」
そんなことを、凡庸であった教授ぶりへの感想をもこめて囁きあっている連中がある。形式ばった茶話会がくずれてから、多喜子はヴェランダのところで煙草をすっている桃子のそばへよって行った。
「お嫂さん、小包で送ったりして、何とか云ってらっしゃらなかった?」
「平気よ。――きのうだか早速着て出かけたわ」
多喜子は、ちょっと躊躇していたが、やがて、
「実は私、こないだのあの方たちの話、余り妙な気がして……」
と云った。
「私の仕立屋さんとしての面でだけ受け切れないようなところがあって」
と苦笑した。桃子は、とっさに何のことか見当がつきかねる風であったが、
「ああ」と、軽くうなずいて、
「あのひと達ああなのよ」あっさり煙草の灰をはたいた。
「そう云ってしまえばそれっきりみたいなものだけれどさ。――私桃子さんの生活が、やっぱりああいう空気の中にあるんだと思うと、それでいいのかしらって気になるわよ」
「大丈夫よ、原さんたら!――相変らずねえ」
どこか微に誇張されたところのある快活さで桃子は陽気に多喜子の背中をたたいた。
「私は私よ。お互があれで幸福なんだから、はたでかれこれ云うに及ばないのよ」