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ふたりのもうじん
二人の盲人
平林 初之輔
「祖国 第三巻第一二号」1930(昭和5)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,366 字 · 13 页
「どうぞ、冷めないうちに召し上がって下さいまし」
藤木は、手さぐりで茶碗をうけとった。
「貴方はいかが?」
「コーヒーは、咳によくないから、わしはお冷水を貰おう」
「そうでしたわね、せっかく三つこしらえたんですけれど、それじゃそうなさいまし」
二人の、コーヒーを啜る音を聞きながら、玄石は、邪悪な満足の微笑を浮かべた。
藤木と、千鶴子とは、いろんなことをつぎからつぎへと話していた。玄石は気管支の苦痛を、長火鉢によりかかって耐えているようだったが彼の心の中は、麻のように乱れていた。二人が親しそうに話を交わしているのを見ると、また新たに、憎悪の炎が燃え上がった。彼は、自分の今やった残忍な行為を、少しも後悔していなかった。それどころか、妙な嬉しさが、ぞくぞくと胸にこみ上げてくるのだった。
彼は、モルヒネの効果を発揮する時間を、正確に知っていた。毒の作用が、全身に回りはじめた頃を見はからって、彼は、二人の方をふり向いた。
「藤木君、それから千鶴子、わしは何もかもちゃんと知っていたんだよ、はじめから知っていたんだ。ただ言わなかっただけなんだ。わしは、こんな見苦しいことを生きた人に聞かれたくはない。