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にじゅうさんばんち

二十三番地

宮本 百合子

「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社、1981(昭和56)年12月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,579 字 · 27 页

青空文庫

極く明けっ放しな、こだわりのない生活をして居られる私共は、はたのしねくねした暮し振りを人一倍不快に感じるので、どうしても裏の家を快活ないい気持なと思う事が出来なかった。

何より彼より、一番大まかで、寛容でなければならない筈の主人が、重箱の隅ほじりなので、事実以上に種々思って居た事が無いでもあるまいと正直なところ思う。

それでも奥さんがピリッとした人なら、するだけの事はうまく感じよくやってのけたかもしれないけれ共、いつもいつも、

もうもう此ではやりきれない。

と云う様な根の抜けた目付をして居る様なので、子供はあばれ放題、下女は目の廻るほど呼び立てられて、悪口を絶やした事がない。

どれだけの経済程度なのか知らないけれ共、子供にあれだけの装をさせて置ける位なら、最う少し体の好いちんまりまとまった生活が出来そうなものだがと、思う事がちょくちょくあったりした。

まるで、私の家族とは方面の違った仕事をして居る人達なので、私共の家族が余程変って見えたらしい。夕飯頃帰って来ると、じきに小さい者を対手にふざけたり、唇の間から上手にフルートの様な音を出して皆を面白がらせたりして居る父親も注意を引いたには違いないけれ共、いつでも、少くとも十六の目玉の黒点になって、フッフッと煙を上げそうになって居るのは、私であった。