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にじゅうさんばんち
二十三番地
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社、1981(昭和56)年12月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,579 字 · 27 页
いつも静かな山村さんは相変らず人も居ない様になって居るからてっきりそうだと注意すると、少くとも十人内外の人が酒機嫌で騒いで居るに違いない。
「孝ちゃんの家なのよ、
どうしたんでしょうあの騒は、
皆酔っぱらって居るんですよ。
随分いやあねえ。
と云って居ると、今度は余程可笑しい事があったんだと見えて太い声が引き附けた様に浪を打って笑いこけると、その中に女の様に細いそれでも男には違いないのと、低い低い地面を這う様なのとが殊に目立ってきこえて、沢山の響の中でその二つがいつもかなり聞いい音程を作って流れて行った。
一方は痩せて髪を長く分けた二十代の男で、一方は三十五六の赤ら顔の男に違いない。
若い方は洋服で、太い声は和服のきっと幅広の帯をしめて居る事が、声で想像されるのである。
しばらくすると、端唄や都々逸らしいものを唄い出して、それも一人や二人ならまだしも、その十人位が一時にやり出すのだから聾になりそうになる。
随分私共もおどけた事を云ったり仕たりして笑いこけるけれ共、始終上品な洗練された滑稽と云う事を各々に気をつけて居るので、子供などに聞かせたくない様な文句を高々と叫んで居るのをきくと恥かしい様になって、種々な世の中の事に疑問を多く持ち出す年頃に近い弟などはどう云う気で聞くだろうかなどと思うと、手放しで、ああ