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にじゅうさんばんち
二十三番地
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社、1981(昭和56)年12月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,579 字 · 27 页
おいお前何故早く起きないんだい、
おくれちゃったよ、
いいのかい。
と、女中を対手に孝ちゃんが泣声を立てて居るのがよく聞えた。
まだ小さい子供に、酒に魂を奪われた様子を見せ、下らない事に夜を更けさせたり過度の刺戟を与えたりして、学校の出来が良いの悪いの云う親の無理を思わないわけには行かない。
活動へ行くな、夜涼みに出るなと云って居ながら、平気で倍も倍も悪い様な事をしなければならない様に、云う者からして仕向けて居る。
子供の教育などと云う事を形式的に、両方でちゃんとあらたまって座って居る時に限るとか、親自身で面白がって居る時は子供に教える折でないとか云う様な調子が、あんまりはっきり分るのでいやになって来る。不幸な子供達だと思う。
子供の時からそう云う事にならされた者達は、馬鹿騒ぎをする事は何でもない、酒を飲んで居る時は、あらいざらいの馬鹿根性をさらけ出していいものと思って、ひどい間違った考えを持たせられるのである。
そんな事は、きまりきって居る事だけに余計危うく、みじめに感じられるのである。
そう斯うして居るうちに四五日は気のつかない中に立ってしまって、いそがしい仕事があったので、それに追われて外にも出ずに居るうちに二十三番地――孝ちゃんの家は空家になって居た。