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にはいじん
二癈人
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1924(大正13)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,388 字 · 23 页
軈て私もこうしてはいられないと気がつきました。一層学業を抛って国許に帰ろうと決心したのです。で、ある日、それは最初の発作が起ってからもう半年余りもたった頃でしたが、長い手紙を書いて親達のところへ相談して遣りました。そして、その返事を待っている間に、どうでしょう、私の恐れに恐れていた出来事が、とうとう実現して了ったのです。私の一生涯をめちゃめちゃにして了うような、とり返しのつかぬ悲劇が持上ったのです」
斎藤氏は身動きもしないで謹聴していた。併し彼の眼は、物語の興味に引つけられているという以上に何事かを語っている様に見えた。正月の書入れ時もとくに過ぎた温泉場は、湯治客も少く、ひっそりとして物音一つしなかった。小鳥の啼声ももう聞えては来なかった。実世間というものから遠く切離された世界に、二人の癈人は異常な緊張を以て相対していた。
「それは丁度今から二十年前、明治××年の秋のことです。随分古い御話ですがね。ある朝眼を覚しますと、何となく家の中がざわついていることに気附きました。傷持つ足の私は又何か失策をやったのではないかと、直ぐいやな気持に襲われるのでしたが、暫く寝ながら様子を考えている中に、どうも唯事でないという気がし出しました。