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にじゅうしんぞう

二重心臓

夢野 久作

「オール読物」1935(昭和10)年9、10、11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,188 字 · 129 页

青空文庫

幕が締ると皆ホッとして囁き合った。

「ねえお兄様。イクラか書換えてあって?」

「ウン。それが不思議なんだ。この幕は大体から見て僕が書下した通りなんだ。あんな大道具をどこに蔵って在ったんだろう……ただ柳仙夫婦の殺されの場がすこし違うようだね。あんな風に老人の柳仙が頭からダラダラ血を流して拝むところなんぞはなかったよ。キット睨まれると思ったからカゲにしておいたんだがね」

「警察の人は来ているんでしょうか」

「来ていても今晩は何も云わないのが不文律みたいになっているから大丈夫だよ。その代り明日になるとキット差止めるとか何とか威かして来るにきまっているんだ。もっとも呉羽さんは、それを覚悟の前で演ってるのかも知れないがね」

「……でも轟さんと呉羽さんの前身だけは今の幕で想像が付くワケね」

「ナアニ。みんな芝居だと思って見ているんだから、そんな余計な想像なんかしないだろう」

「そうかしら……でもポオの原作なんて誰も思やしないわよ。あれじゃ……」

「フフフ。黙ってろ。幕が開くから……オヤア……これあ西洋室だ……おれア日本室にしといた筈だが……」

「……シッシッ……」

第二幕の第一場は大森の天川呉羽嬢邸内、轟九蔵氏自室の場面であった。