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ごじゅうねんだいのぶんがくとそこにあるもんだい
五〇年代の文学とそこにある問題
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第十三巻」新日本出版社、1979(昭和54)年11月20日初版発行
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,472 字 · 50 页
中野 ……(肯く)
「文学者御前会議」につれて林が人生と云っているものが、まともな人生を意味するなら、宇野浩二のあの文章は、日本人の人生そのものに関して圧巻であった。昔、宇野浩二が書いた小説に、菊富士ホテルの内庭で、わからない言葉で互によんだり、喋ったりしながら右往左往しているロシアの小人たちの旅芸人の一座を描いたものがあった。植込みや泉水のある庭のあちこちを動いたり、その庭に向っている縁側を男や女の小人が考えたり、話したりして、彼らの人生をまじめにいそしんでいる姿が、宇野浩二一流の描写力で哀れにもユーモアにみちて描かれていた。
「文学者御前会議」は、宇野浩二のその小説をほうふつさせる。フランス文学者であり、アンティ・ファシストであり、アヴァンギャルドである豊島与志雄が、時代ばなれしたフロックコートの裾をひるがえし、シルクハットはなしで電車にのる描写から、すでにペソスがにじんでいる。行きついた場面では、すべての事のはこびが活人形を動かすようである。他人と比較されることのない風変りな日常習慣のうちで、人柄のある聰明さにかかわらず奇矯な癖をもっている天皇の動作、きいた風な宮のとりなし。